「国際連合−その光と影」明石康

国際連合の本、、、何冊目か忘れた、基本的に国連に深く関わった明石さんの本のいいところは少しでも世界情勢に興味があれば「面白い」内容になっていることかと思うんですが、その分ちょっと多面性に欠け、とはいえ人道的には問題ないかなと。
(国連が正義だとは限らないけど、ここにない場合どこにあるのかという話です)(奇跡のような善人を抱えた主体がいないわけではないですが、それを讃えるのは正しくても、頼っちゃ駄目だと思うのですよ、システムには不完全な正義しか望めなくても。)
この本は1章が日本と国連、2章がその成り立ちと当時の各国指導者の思惑と、その全てを越えた方向に発展した国連という概念、3章から冷戦に突入して、だいたい1〜2ページくらいで様々な事件を幾つかの観点で取り扱っています(時代順ではないみたい)。


印象深かったのがやっぱり結果的に中東全土を巻き込んだスエズ危機、それとほぼ同時期のハンガリー事件。スエズ危機で世界を相手に廻したのが英仏にイスラエル、ハンガリー事件はソ連の共産主義に絡んだハンガリー国内での暴動。前者への鮮やかな国連の対応と解決と、その栄光の陰に隠れたハンガリー事件への未対応でしょうか。
ちなみに“国連の軍”という概念が発生したのはスエズ危機の時のカナダ首相の案が元で、その歴史がむしろ軍事に傾いていく過程で、非軍事的であった頃のほうが何故か効果的であった、という変遷を辿るのはこの本ではないかな(現在進行形で苦慮中)。
各地の植民地が徐々にいろんな形で開放されていく、という歴史も、興味がないわけではないんですが、これだけまとまっているものを読んだのは始めてでした。
国連事務総長へ託された仕事の範囲が広すぎる、というのは内部の人ならでは。なんというか国連って権威を背に、なるべく公正に妥協を強いる組織であるべきなのかなぁ。