「古代オリエントの生活 生活の世界歴史1」三笠宮崇仁

大雑把に地域はエジプトから中東一帯、“生活”が主題になっているだけあって国そのものよりも地域性のようなものが重視されてはいますが、いずれにしろファラオを頂点とする支配の制度を避けてまともに語れるはずもないわけで。
エジプトとメソポタミアにまず地域を別け、さらにメソポタミアを南のバビロニアと北のアッシリアに別けて説明しておられます(地域的には統合されたり別れてたり、別れてることのほうがこの本の中では多い印象でしたが、いずれにしろ文化は別)。バビロニアってのは例の『旧約聖書』の“バビロンの塔”のアレw
巨大な建築物ジックラドを持ち(些か排他的ながら生活の場)、他民族から羨望の目で見られたというあの人たちです。旧約聖書は羨ましいって感情に素直で素敵(あとは同時代の資料がなくなってさえなければね、でも今は発掘資料があるから大丈夫ー)。


まあ、書記が数少ない庶民の立身の手段としてやたら優遇されたとか、奴隷も制度としてはあったものの完全に人権がなかったわけでもなく自由民との結婚や開放されるチャンスもあったとか、王は絶対君主というよりもむしろ「王としてのルールの中」から逃げることは出来なかったのではないかとか。
各種食物に風土病、それを結果的に防ぐことになった化粧の仕方に、もちろんミイラも語られてましたが比重は低く、様々な職業とその地位や数。王の墓という特殊な作業に対して借り出されたと思われる労働力に、銅(非常に希少で一部に富を集める)から鉄(どこにでもある程度あり、技術があれば誰にでも使える)への変遷によって起こった社会的な有力者数の増加、相対的に落ちた王の地位、というように非常に話が広い。
というより、珍奇な古代文化のご見学といった感じの本ではなくて面白かったですw