「修道士の頭巾」修道士カドフェル3、エリス・ピーターズ

修道士の頭巾―修道士カドフェルシリーズ〈3〉 (光文社文庫)

修道士の頭巾―修道士カドフェルシリーズ〈3〉 (光文社文庫)

クリスティの本はキャラクタが頭に残ってトリックを忘れ。
セイヤーズの本ではその逆がよく起こるんですが、エリス・ピーターズの本は概ねセットで覚えていることが多いです。良いとか悪いとかではなく、最初からトータルで話が形作られているというか、人生そのものが動機になっていることが多いという作家の好みによるものなのかもしれません(そして生活の中でふとした瞬間に犯罪になってしまうというか、トリックを弄したわけではないというのもあるのかも)。


カドフェルさんの昔関係のあった(まあ十字軍に10年も行きっ放しなら結婚してても女性に罪はない)女性の息子が殺人容疑を掛けられました、という微妙な事件。
殺されましたのは彼の父親で、仲が悪いのは誰もが知ってます、そもそもが仲直りの食卓でそれがぶち壊れて仲直りされることなく出て来ちゃったという状況だったりしますわけで、食事はその彼の通りすがりに運ばれていましたので状況証拠なら完璧。
ただし彼はまあ、大人しいとは多少の贔屓目があっても言いにくいものなのですが、殴り殺すことがあるかもしれないという性格なのであって、その性格と毒殺のために毒を持ち歩くことには確かに深い溝があるとは思いますね。それが無実の証拠にはならなくてもね。
“修道士の頭巾”は毒の名前、ぶっちゃけてトリカブトで、どうもカドフェルさんの薬品棚から持ち出された可能性が高いといういやんな展開。
さりとて他に疑うべき相手も特にいないような状態で。
さて、昔の恋人のためになにをしてやれるのか、という話なんでしょうかこれは。
全ての糸が解け、犯人が判明した時、なんともいえないやりきれなさがありました、日本人には多分ちょっと、わかりにくい話だとは思うんですが。