「「エルサレム」亭の静かな対決」警視リチャード・ジュリー5、マーサ・グライムズ

シリーズ5作めで「作者にとって一番思い入れのある」と言われているヒロインが登場するとのことなのだけれども、確かに魅力的ではあるものの、ほとんど通りすがりのようにリンカーンの墓地に現れてあっという間に消えてしまい。
実際に出会ったジュリー警視が引き摺られるようにして事件に関ろうとしたことへの疑問はないものの、さて、なんでそこまで読者の記憶に残ったのかなぁ、とかはよくわからない。


このシリーズは他に愛称としてパブ・シリーズと呼ばれているそうなのだが、1話めでは事件には関係があったもののさして面白いというほどの内容でもなく(村の老人が突然に謎を解き明かしたシーンは面白かったけれど、逆にそのせいで殺人事件の演出に使われてしまったというのはリアリティはあるが笑えないw)、次の本からは複数出てくるパブのどれかわからないようなこともあれば、名前との関係もいまいちわからないこともある。
が、とりあえずこの巻ではクリスマスの演出に関ったパブの名前はすんなりと頭に入ってきたし、読み終わってみると、なんだかそのタイトルの意味もわかるような気がする。
そしてシリーズ随一の魅力的と言われるヒロインも出てくる。
相変わらずキャラクターはコミカルだし、事件に携わる形で出てくる子どもの描かれ方も素晴らしい(むしろこのシリーズで一番掛け値なしにいけてるの様々な子ども描写じゃね? とかちょっとだけ思わないでもない)。
事件の展開も、ばらばらに殺された被害者たちが細い糸でつながったし。
理解しにくい犯人の動機も全く語られずにメルローズが代弁して引き受けた。
読み終わった時点では傑作だとも思ったが、やっぱり今思い返してみるとさしてなにも残っていない、雪の記憶だけはなんだか奇妙に鮮明だ。