「ハンニバル戦記(下」ローマ人の物語5、塩野七生

カルタゴ本国に踏み込む形でハンニバルを下し(しかし、ハンニバルさんの一生って一体なんだったんだろう、あれだけの能力を持ちながら)、ギリシャ人からの要請によって他国を侵すマケドニアに釘を差し。
いずれもそれ以前の寛容の方針を貫いたものの、ギリシャ系の諸都市との小競り合いが続く中でコリント(アテネ、スパルタに次ぐ三番目の都市国家)を解体し。また、共同体としての態を成していなかった現スペインの地を今までと違う軍隊を常駐させる形で支配。
(前者は自立心旺盛っちゅーか、利用するだけして舐め腐って下さるすれっからしのギリシャ人に対する見せしめで、後者はまあ行政上の問題で、真逆の理由ではありますが。)
で、そのローマの強硬な態度を背景にカルタゴの諦めの悪さがタイミング悪く重なってしまい(でも、それもローマへの不信だよね)(カルタゴの消滅論者が議会を二分してるような相手を信用できなくて当然だと思う)、この北アフリカの豊かな都市を完全に滅ぼすことになったのだ、というところまでがこの巻。


ローマの宿敵ハンニバルは亡命を続け最後には毒を仰ぎ、彼を止めたはずのスキピオ・アフリカヌスはほとんどその戦勝そのものが妬まれ(た、だけではないと思うけど)、執拗な攻撃とでっち上げに近い断罪によってローマを追われ。
ローマの青年期とも言える一つの時代が終わり、なんちゅーのか、ずっと柔軟さを誇ってきたローマに一滴の墨のようなものが垂らされ、この後も現れ方は違うものの国内の保守派(ぶっちゃけると元老院)との様々な軋轢が根本的には解消されないまま。
帝政時代の直前、カエサルの登場まで引き摺るって根が深いんだなぁ。
はははw 農民出身という大カトーは素直に大嫌いです、この本では無理だよねー。