『美の巨人たち』シリーズ“夏休みに見に行こう”木田金次郎「夏の岩内港」

木田金次郎−Wikipedia
(1893.07/16−1962.12/15)


有島武郎さん(小説家)にお礼を言わなくてはならないのは当人よりもまず家族ではないのかと思うのですが、だって「君の感性は海の生活で磨かれたものだと思うよ?」なんて言われたら誰だって戻って家手伝おうってのも張り切るじゃないですか。
結局なんだかんだと、危機を脱するまで漁師手伝ってたっぽいじゃないですか。
しかもその後、彼の小説≪生まれ出づる悩み≫の主人公にもなり故郷の名が知れて。
さらに地元でも名の知れた画家になったりした時に、家族が反対とかするわけないじゃないですか。しかも有島さん慧眼だったわけじゃないですか。


ある日、自分の飾ってあった絵を見たとはいえ、突然、絵の基本的な勉強もしてないよーな青年が押し掛けてきて、自分の実家が危機に陥ってる話をして。
己は絵を描くために東京に残りたいのだ、と訴える彼に言った言葉がそれって。
もう正しく本当に人生の救世主だと思うんですよ、掛け値なしに。
彼の家を偶然見つけて図々しくも(多分煮詰まっていたせいだと思うんだよ)、押し掛けてなかったら彼の人生もっと回り道が多かった気がするんですよ。鬱屈というか。どの道を選んでいたのだとしても。
そして彼は画家になって、どんどん名が売れてきて個展を開く寸前。
大波に全てを浚われてしまってもなお「これからだよ」と言ったってんだから強いよね。それは人生を重ねた本当の強さってことなのかなぁ、と思うんですよ。