『美の巨人たち』シリーズ“夏休みに見に行こう”川上澄生「初夏の風」

川上澄生−Wikipedia
(1895.04/10−1972.09/01)


とある女に一目惚れして、ずーっと声掛けられないまんまだったところ友人に仲介して貰えることとなり、と思ったら婚約者がいたのだという完全無欠に一人芝居だった初恋というのはもしかしたらそれほど珍しいことではないのかもしれませんが。
その後どこまでも引き摺り続け。
ある意味で人生そのものまで大きく影響を及ぼした人はそうは多くないのかもしれません、失恋の後アメリカに行きその地で彷徨っている間に親族が亡くなり、帰国を余儀なくされた後はどことなく落ち着かない様子で職を転々とし。


ある時に教師の職を紹介され、そこでは結構面白い先生であったようですが。
自分は半端モノなんだよ、としみじみと語ったりもしているようです。
いつの頃からかスケッチの他に版画も始め、世界的名画≪ヴィーナス誕生≫に出会うことでやっとなにかが昇華し、描き、、じゃなくて彫り上げたのがこの≪初夏の風≫(でも絵としては全然似てません)(芸術家同士の模倣というのはある意味で自分のフィルターを通すことでもあるのかね)、女に触れたいのだ、と書き込んでいた詩の文言から。
「自分」を削ることで普遍的な内容とし。
やっと思いと折り合うことが出来たのだというなんというか不器用な人生。
棟方志功を感嘆させたのも、ある意味で独立独歩としか言えない(正直悪い意味かもしれん)その人生が生み出した、当人の物でしかありえない作品だったんでしょうか。