「暗い森」アーロン・エルキンズ

世界で唯一、と言われる(へー)針葉樹林の“雨林”の中で、6年前にハイカーの男性が2人消え、また最近消えた17歳の女の子を探していたところ人骨を発見、そこにあったのはカリフォルニアの特徴を持つインディアンの籠と、100年ほど使われていたらしい墓地で、皆は盛んに「ここにはインディアンはいません」と言うわけなのですが。
(いるにはいますが保留地で農商業やっておいでです。)
蓋を開けてみれば目撃証言はちらほら、証拠品は現地の人やハイカーの記念品になり。
あまつさえ、近所の爺ちゃんが若い頃に「その辺にいたよ?」というので、これはこう、むしろ未知の存在がどう、というより、実際にいた方たちをひたすら黙殺していただけだったんじゃねぇのか、という薄気味悪いリアリティを感じてしまったんですが。


物語そのものはひたすら“過去”の文明にロマンを感じている人類学者の視点で進み。
せいぜい本当に救いがなかったのは、ヤヒ族のイシ(実際にあった「発見」されたインディアン)の話と、醜いカタミミとその孫を見送った少女の思い出話くらい。
根拠はありませんが、この後者の資料も実在していて、案外この資料を読んでこの作者さんは“暗い場所”を探し、この小説を書いたのかなぁ、と想像しないでもないんですが。
この話のクライマックスは多分若いインディアンが語り始めた場面で。
そこから至るラストまでの結論を、甘いと見るか、せめてもの救いと見るかはまあ人によるのではないかなぁ、と思えなくはないんですが、この話の捩れってなにも“彼ら”の存在だけじゃないじゃない、たった卵二つで誇らしげに切り裂かれるのもそうだし。
作中の目撃者である老人の生活が、精神面どころか物質面ですら彼らに適わない辺りも。
これはこれでグロテスクな現実の描写だよなぁ、とふと思えてしまうんですよね。