「パリ−世界の都市の物語」木村尚三郎

とりあえず、パリに心酔した自分自身に酔っておられても、別にそれ自体には全く罪はないと思いますし(少なくとも少々なら)、パリと日本を比べ、後から自分で選んで移住した都市に高い点を付ける、というのも全く自然な感情だとは思うんですが。
並べられるとちょっとばっかし辛かったですね。
ええもう、文章や語っておられる内容そのものに難はないので、なんでそんな気持ちになるのか、、、とむしろかなり読み進めるまで不思議に思ってたんですけどね。


で、内容としては可もなく不可もなく。
正直日本人的感性としては最初に異様なまでに褒めて持ち上げておいて、後から、まあ、ここに欠点があるけどね、ここもね、という指摘は逆のほうが良かったな、というのはしみじみと思うんですが、それはもちろん勝手な好みにすぎませんし。
そもそも、こっちの語り口のほうが“パリらしい”ちゃあパリらしいような気もしないでもないんですよね、ある意味でもともとフランスという国家そのものがパリを中心にした≪イル=ド=フランス≫という地域から始まり、ある種のはったりに近いような自負で少しずつ周囲を呑み込んでいった、とも表現できないでもない歴史。
極端に膨れた人口、それに伴う劣悪な衛生環境は今ですらその名残りを留め。
けれど大通り沿いのカフェだけはいつも完璧、紛れもない学術の都、文化の発信源。
首都もたびたび移ったけれど、なぜか常にこの地に戻ったという不思議な来歴。
話し掛けると意外と親切なものの、隣に引っ越して来た相手すらひたすら待ち侘びるだけだ、という「個人の尊重」(気にならないわけではないんだねw)、でもこれ、この都市の方らならば案外口に出して誇ったりもするのかしら。