「フランス料理を築いた人びと」辻静雄

まあ、どちらかというと私が目的としていたのは、ちょうどこの本の著者さんがせっせと探していた側の“フランス料理そのものの歴史”ではあったのですが(要はカトリーヌ・ド・メディシスがイタリアから持ち込んできたとかそういうの)、時代は18世紀から19世紀、大雑把に最後に「限られた人のためだけ」に料理を作っていたシェフたちから。
現代のフランス料理を作り上げていった人たちや。
南仏を舞台に活躍する未来のフランス料理家などが扱われ、それ以上に比重が高かったのはそうだなぁ、著者さん自身のアプローチっていうか、どのようにして誰と出会い、フランス料理の真髄とも関わるようになったか、という一代記のようなもので。
別に不満があるわけではないんですが(日本のフランス料理を作り上げた方、というか、日本で本物のフランス料理が食べられるのはこの方のおかげだとか、それは大したものだと思います)、ぶっちゃけて一冊目に読むにはお勧めしにくいような気はするかな。


ともあれ、何代も続くフランス料理の老舗なんてぇものはないんだよ。とか。
(日本料亭ってのはあれは本当に続くだけの価値があるのかなぁ、ということを引き合いに出しておられたわけですが、徒弟制度のあるなしなどという違いはあれど、確かに、先代が優れていて次代も、というのはちょっと不思議な話ではありますね。)
この店はもとはこう、いつ店舗が変わったかすら判然としないこともあり、持ち主も変わり、はなはだ曖昧であれど「フランス料理」そのものの地位は揺るがず、店で正直舌の肥えたといえない人々に食べさすのは不幸かしらとか、だったら特定のお金持ちである誰かに抱え込まれてるのが本当に幸せだったのかとか。
どうもこう、料理とは? という概念そのものを問うような体裁でしたでしょうか。