「死刑執行人サンソン」安達正勝

もともと人々からどうしても忌み嫌われていたため、代々世襲だったとあるフランスの死刑執行人の家に、出自は不明ながら明らかに知識人であったサンソン氏が婿入りすることになりましてね(偶然というか事故というか、男としての責任は取ろうね、というか)(出自が不明なのも多分自分の親族に迷惑掛けないためだろうね)。
死刑執行人の人体知識と併せて医者としても名を馳せ、その数代後には“ミスター・パリ”、首都パリの死刑執行人という特別な地位を占めるようになったそうなのですが。
その中でも6代目(だっけ?)は、フランス革命の折、国王の首を落とすような役目にもなり、その次の代では死刑制度そのものに反対するような子孫も排出。
この本の主な資料も、その「王を処刑した男」の日記からなのだとか。


産業革命化後の隣国イギリスに財政的に押され、戦争が頻発するような時代。
フランスの財政がひっ迫する中(これ正直、王妃のせいとか全然関係ないよね;)、身分の低さを補うように手厚かった死刑執行人の手当ても滞りがちになり、啓蒙思想の出現するような世論の流れで死刑が残酷だ、という意識が市民の中から自然に生まれ(その“結果”が一瞬で処刑の終わる「ギロチン」なのですけどね)、サンソン氏も自らの立場を守ろうとして論文を発表したり、死刑執行人の身で王に対面が適ったり、社会が動いている、という実感もあったのではないでしょうか。必ずしも悪い方向だけでもなく。
けれど、市民の要求の前に王が国を逃げ出した辺りから全てが急激に狂いだし、結局、深く敬愛していたはずのサンソン自身が王の処刑を実行するようなことに。ある意味でこの時代、彼の気遣いが狂気の中で人に染み、誰にも非難されなくなったとはいうのですが。
そんな「変化」を望んでいたわけではないんだろうな、この人も。きっと。