『美の巨人たち』有元利夫「花降る日」

有元利夫−Wikipedia
(1946.09/23−1985.02/24)


「僕が死んだら君が描けばいい」というのはある意味、傲慢なのかもしれませんが、技量において上回る男との暮らしで壊れた芸術家の女を幾人か知っているととても笑うことは出来ず、なによりも奥さん自身もそう思われたのでしょうか。
夫を亡くしたあとアトリエに陣取り、夫が志した洋画とも違う道。
日本画・陶芸をなさっているのだそうで、これもこれで穿った見方なのかもしれませんけれど、間違っても劣化コピーなんぞになりたくない、というそれはそれで潔い姿勢だと私は思ってしまうんですが(芸術的素養はありませんが)。


正直私もかなりの数、絵としてではなく表紙、イラストの一種として拝見しています。
どこだか全くわからないそもそも不思議な色合いの背景の中、男か女かもよくわからないような人間が必ず一人きり、どこに行こうとしているのか、どうしてそこにいるのかもわからないような絵。ええ、覚えてます。
そういえば、何者か、と聞かれるとなにもわからないし、なにをしているのか、と聞かれても見当も付きません、梯子に昇っているような構図もあったような気がしないでもないけど、そもそも浮いてるじゃん、彼ら。
そう、足がないんだ、手は少し浮き気味に差し出され。
なぜか舞台のように花びらが振っている、どこから現れたのかも全く不明。
この世のおよそ誰でもなく、どこでもないからこそ、“すべて”の存在なのだとか。