『美の巨人たち』長谷川利行「岸田国士像」(日本)

長谷川利行−Wikipedia
(1891−1940.10/12)


というかどっちかというと、岡惚れとかそっちの行動に近いみたいな気がするんですが、一旦「絵を描いたらば」その後ずるずると小金をせびりにやってくるって、悪意っちゃあ悪意だし迷惑っちゃあ迷惑ですが今でいうストーカーっぽい?
長谷川利行は早描きで有名な画家だったようで、演劇や踊りの客席の前列でいい調子で観劇しながらその間に描いてしまうという、そもそもそういうスタイルの画家でアトリエがあるわけでなく、特に値が付くようなこともなく、その日のうちに描き上げてその日のうちに売り払って夕食代等々で飲んでしまっておしまい、死ぬ時も路地裏でひっそりというようなほとんど流れ者。その界隈では結構名が知れてもいて。
だからまあ、ツテを辿って当時すでに有名だった劇作家などの肖像画も描くような話が回ってきたんでしょうが、その準備のために金を引き出し、さて描くか、と妙に気取って向かい合ってみたらそれは4日にも及んだという(にしたって時間が掛かりすぎというものでもないような気もしますが)。んでもって、この絵、私も見たことがありますよ。
確かどっかの教科書? ポスター? まあ、見たことある人いるのではないかしら。


そもそもぐちゃっ、としてるように見えても、なんとなく原型の想像が付くというか、キュビズムのような計算された“醜さ”があるわけでもなくどっちかというと、概念的には印象派にも近いんじゃないでしょうかその題材が卑近だったというだけで。
その場にある、その舞台の勢いというか猥雑さというか、泡のように消え去る一瞬のもの、で、この絵だけはそうでなかったと、まあ知っていたんでしょうかねぇ?