「路面電車時代」吉川文夫

表紙にそのまま書かれている文章の最盛期は1960年代、各路線のデータはそれ以前に廃線になっていない限り昭和39年のもの。一応現存路線だったりそれ以降も長く生き残っている場合には言及があるのだけれども「お別れ花電車の写真などは収録しないようにした」という言葉の通り、基本的には最盛期のものだったらしい。
(多分この辺、この著者さんが他にも路面電車の本を複数出版されているということもあるのではないかと思う。)
ただ、そもそも全体のテイストが大変に古めかしいこの本の出版年齢は1995年。
わざと懐古調になっているというよりは、路面電車の発展のようなものは実際その時期で止まってしまっているということなんだろうと思う。
そもそも1960年代というのは戦後すぐという時代、都電の本を読んでいる時も昭和30年代が最盛期だと書いてはあったものの、その後数年で廃線が始まり、現存都電荒川線を残して昭和47年に全廃。
だいたい、戦後に開通した路線が2路線しかなかったのだけれども、日本全土でもほとんど似たようなものだったらしい、数事業者が開業や新規展開はしていたものの、ほとんど戦前の体制のまま、不十分な設備で「最盛期」を迎えたということになるというか。
そもそもその最盛期そのものも戦争後の一種の仇花に近かったのではないかなぁ。
もう少しまともな状況でその時代に至っていたら、ひょっとしたらその後の展開も違ったんじゃなかろうかとなんとなく思わないでもない。


もともと私は歴史に興味があって、大抵の路面電車の本は写真が主だし説明少ないなぁ、と思っていたのだけれども、時代が頭に入っていたら読み方もわかるような気もする。