「送り火」重松清

これは京王線だよなぁ? とこれを読んだ人が呟いていて、それならと思って手を出したのだけれども、なんというのか、沿線にある時代に取り残されたかのような(消えつつある古い建物と銘打たれたスライド写真集を見ても「あれー?」と思う域ですw 多分地価が高いので逆に手を出しかねてるのかと)建物のある地域や。
沿線から見える富士山、上手く発展し損ねたニュータウンなど面影はあるものの。
潰れた遊園地ってのはないですね、一応、あと人身多いことで有名なのは隣路線かな。
この路線の名前がそもそも“武蔵電鉄富士見線”、お墓は確かまんまの名前の駅がありますね、駅名なんかは一部違うけど結構元ネタがわかるようになってる。
後半になると地下鉄乗り入れがここで合流するって駅が出てくるので露骨すぎるww
もとはそんなつもりなかったんだけどね、と書いておられるように、都市の中に偏在している奇妙なものを、例えば化け猫でも住んでいそうな建物というのは多分作者さんが実際に見にしたもので、そこに展開する話を作っていった、という体裁で。
そこで自分が住んでいた路線沿線をなんとなく彷彿とさせるものになった、というのはその時には意図ないと思うんですよね、遊園地は別の場所ですが廃園になるということで取材に行ったよ、とか、お墓も触れられてなかったけど誰かから話聞いたんじゃないかなぁ。
ある意味で、私たちでも日常生活送ってるとちょっと考えてしまうようなものを形にしてオチを付けた、というような本なのかなと思うのですが。


ここで逆に、どんどんと比重が大きくなっていったのがこの架空の路線の向こうに見え隠れしていた現実の路線で、そうでなければそこで年を経るごとにだんだん沿線を西に移って行くんですよね、という感慨は出てこないんじゃないかな。
語ってるのは幽霊たちだけどこれは現実の話だよなぁ、現実も不可解だよね、なんか。