『美の巨人たち』シスレー「ポール・マルリ 洪水と小舟」(フランス)

アルフレッド・シスレー−Wikipedia
(1839.10/30−1899.01/29)


この番組で出てくる解釈や独特の「描き方」は正しいのかそうでないのかはまあ置いておいて、納得が出来ることと出来ないことがあるのですが、ああ、空を大きく切り取って、少し上を向いて世界を見つめなおしたっていう表現はいいなぁ(間違ってても許すw)。
若い薬屋のお嬢さんと結婚してしまったために父親から勘当、、、されたと思ったら戦争勃発で父親ごと失い、その年下の奥さんも舌癌で失い、各地を彷徨いながらかつての印象派の友人たちが成功していく中で“一番最後まで貧乏だった”という印象派の画家さん。
そして絶望の中でとある街が洪水に沈むのを見、その街が復旧していくまでの連作の一つがこの回の絵、ある程度水が引き、嵐が去って青空が訪れ、まだ被害は完全には収まっていないけれどちょっとほっとしたという、異常事態の中ながらも日常的な感情。
この絵を何度目かに見せられた時にちょっと涙ぐみそうになって。
正直自分でもなんでだかわからず「なんで?」と思ってしまったのですが、ああ、実際の状況はけして明るくはないんだけど、少し視点を変えて空を眺めてみたら案外美しかったというそんな絵だったのかしら、生活もけして楽なものではなかったようですが。


最も印象派らしい画家だ、という意味は多分きちんとわかってはいないのかも、とは思っているんですが、売れなかったことではないよね、描き方を変えなかったことはむしろ逆。現実を、ありのまま切り取るというのは印象派ではないし、ああ、淡々と過ぎ行く時間や感情の変遷すら映したってのはそれはそれてありのままなのかなぁ。