「悪名高き皇帝たち(3」ローマ人の物語19、塩野七生

50過ぎ、それまでの人生のほとんどを「歴史書」に費やしていたという文人皇帝といった感のあるクラウディウス。
総合的な評価としては塩野さんの「アウグストゥスは彼のことを断罪などしないと思う」で十分なのではないでしょうか、うんまあ、あの性格だと素直に褒めてまではくれないような気もしないでもないんですが、ティベリウス辺りならむしろ認めてくれるかなぁ。
カリグラのやらかした悪いところは改め。
ティベリウスの路線を実際強く意識していたのであろうにも関わらず、口にしていたのはアウグストゥスへの回帰、上手いなw
そして、ティベリウスほどの節約の必要もなく、カリグラが見栄のために始めた運河計画も立て直し、エジプトのオベリスクを運ぶ、といういらんコンセプトの船は穴を開け工事の礎として海に沈め、先を見越した港を作り。
こまこまと税金対策をシンプルに作り替え、奥さんには恵まれなかったけれど、開放奴隷の秘書らはトータルでいい仕事もしたんじゃないのかなぁ(塩野さんはナルキッソスがちょっとお気に入りっぽかったですねw)。
(そして周囲に愛されていた兄ゲルマニクスの庇護が彼の健全な精神を育んだのでは、という捉え方はすごく素敵だと思います、そういうことってあると思う。)


国を整え軍備を拡張しようとせず、紙の上だけの知識とはいえ任すべき人に任す柔軟性もあって、ローマの外にも人材を求め門戸を開き、それを納得させもした。
彼本人は恥じることはあるかもしれないけど、物の道理がわかっている人ならば笑ったりはしないでしょう。