「よみがえる東京−都電が走った昭和の街角」三好好三

簡単に歴史の流れを書いておくと昭和20年(1945年)が終戦の年で、この著者さんは昭和12年の生まれ、東京市が東京都、となったのが終戦の2年前。そもそも「東京市電」という括りで書かれた本も何冊か読んでいるのですが、そちらでは路線は主に愛称で呼んでいて、戦時中に全41系統の数字での系統表示が始まったようなので、この著者さんが早熟でもさすがに戦前の記憶はないでしょうねw
41系統もあってどうやって覚えていたの、というとどうも自分が使うところだけ覚えてたんだよ、ということらしいんですが、その結果なのかなんなのか、正直都電時代の本ともなると全体図が掴みにくいんですよね、多分書いてる方もぼんやりとしてる。
大雑把に都電を中心に栄えてた土地があるよ、ということはわかってはいるものの、なんかそれを漫然と並べてるような風情がないでもない。


と書いておいてなんなのですが、この本は逆にそちらの欠点はなかったように思います、どの系統がどの土地とどの土地をつなぎ、どの土地に交通機関が遅く(時に都電から地下鉄までの間が開いてしまった、ということも含めて語られていたり)、とても大事にされた都電があったとか、繁華街同士をつないだ路線があったとか。
んで、最近になって知ったんですが、戦前の愛称と戦中以降の系統表示って結構な変更点があったんですが(複数の愛称線を一つの数字系統でまとめて貫く、みたいな形になっています)。そういうことを知らなくても、路線そのものにある性質がなんとなくわかるようになっていたり、所属営業所がわかるようになっていたり、地味にありがたい。
ただよく考えてみたら各ターミナル事情や廃線そのものが特に語られてなかったので、都電よりも過去の時代への傾倒が強い本だったのかもしれませんw