「生贄たちの狂宴(上」デヴィッド・ヒューソン

まあものすごく正直に申し上げて「イギリス人が書いたイタリア・ローマ」の警察小説、というのが妙にしっくりくるのは多分後知恵というものだとは思うんですが、でも、主な語り部である相方を悲劇的に失ったばかりの若手警官を筆頭に。
今まで順調に歩んできた警官人生を踏み外した規格外のベテラン刑事。
名前にクレイジーをこっそりと冠された事件に首を突っ込みたがる女性監察医。
(なんか意外と面白かったんですが、その助手の“修道院坊や”。)
署内のマドンナ的な交通課の婦警はどことなく仮面を被ったようで余所余所しく。
上司はクールで有能、彼の元の愛人は冷徹な弁護士で特殊捜査機関に所属。
なんといったらいいのか、むしろ修道院坊や辺りのキャラは突き抜けてて面白かったんですが、なんか全員堅い、妙に観念的というか、ぶきらっぽう。ということになると、ああ、イギリス人、ということに納得してしまうのも私だけが悪いんじゃないのかと。


よくよく考えたらイギリス人の少女がかつてローマで失踪し。
その死体が泥土から発見された時には完全な死蝋と化して一度大幅に死亡日時判定がズレ、身体には“ディオニソスの秘儀”に関するタトゥーが刻まれ、その発見の数日後にはその子とよく似た顔の観光客の少女が行方不明になり。
ただのボーイフレンドとの一泊旅行だろう、という見方も無理はないものの、少しずつ見付かる違和感に主要捜査メンバーはじりじりとし、ついにディオニソスの儀式について学者に聞き込みに行ってしまった観察女医さんは危機一髪で死に掛け。
行方不明の少女の周りからも、無視できない大きな手掛かりが見付かった、というところで上巻終了、正直、事件に関してのエンジンが掛かったのはラスト数ページだった気が。