「生贄たちの狂宴(下」デヴィッド・ヒューソン

本を最後まで読み終わってみると、何人もの思惑が絡み合った非常に複雑な「仕掛け」だった、ということが判明し、正直、この犯人の動機がわかるか、というとそういうことはないんですが(でも同情の一つも請うでもなく、さっさと消えてしまっていますし、そもそも理解を求めてなんかいないのかなぁ、という気はしないでもないんですよね)。
ただ、なんとなくこのやり方になった部分だけはわからないでもないんだよなぁ。
そして彼、主人公であるニック・コスタ刑事が“選ばれた”ことの意味も。


泥土の中から観光客が17歳の少女の死体(20年モノ)を見つけ出し。
その数日後に彼女とよく似た少女が母親の前から消え、そこにローマの有力マフィアの抗争が絡み、そんな事件に対峙するのは相棒を失った傷心の若手刑事、売春宿にいるところを見つかって降格されたやり手のベテラン刑事、どうにも暴走しがちの解剖女医。
離婚の原因になったかつての愛人が捜査に絡み、動揺しがちの切れ者上司。
上巻はともかく、下巻ではこの濃い捜査陣のバランスも取れ。
一番好きなシーンはあれですね、ベテランが捜査終了後に若手と上司(長年の親友)に「飲みに行かないか?」とわくわくしながら聞き、返ってきたのが「サラダだけじゃ足んない」「ワインが旨くなければ嫌だ」という我が侭いっぱいの答えだったので。
多分至福のひと時だったと思います、女ですけど、このシーンはよくわかったさ。
いやもう、どっちもどうも堅物だしね、他愛ない言動なんですけど、事件の重くって正直よくわからない展開を少しだけだけれど救ってる感じで良かったなぁ。なんていうんだろ、事件を通して、刑事たちの側の殻もちょっとだけ破れたみたいでね。
コインが“別れの儀式”ってのは、最初から示唆されていたんだよなぁ、ホント。