「中世ヨーロッパの都市世界」世界史リブレット23、河原温

中世ヨーロッパの都市世界 (世界史リブレット)

中世ヨーロッパの都市世界 (世界史リブレット)


そもそも“中世ヨーロッパ”が暗黒の時代だった、とかつて言われていたというのはなにも忘れたい時代だった! というだけのことでもなく(この時点で偏見入ってますな)(でもものすごく酷い偏見ではないでしょう、多分)、現実的な話、歴史史料と分類される、いわゆる歴史書の少なさが歴然とした事実としてあるのですが。
ともあれ、都市の庶民の生活とか、商人の活動とかは最初から期待しにくいわけなんですよね、個人的な日記とか書簡が(あくまで連続したもの)、歴史史料を本来補うわけですが紙が貴重な時代にそうそう商人に期待するわけにもいかず。
そうなると残るのは実際の取り引き記録の類でしょうか。
(そのうち読むつもりなんですが、農村には農村でこの手の悩みがありそうです。)


というか、それなりに名前も知られていると思うのですが、≪ハンザ同盟≫と呼ばれる各国都市をつないだこの国家に匹敵するという巨大な組織が、「どこの都市が対象だったかすらわからない」となるとかなりの重症で、それは特に隠すつもりでもなく、わざわざ記録しなかっただけという、軍事機密じゃあるまいし、交易都市隠してどうすんだ一体。
この岩波書店のレーベルに関しては今のところ2冊、いや、3冊かな? しか読んでいないのですが、たまたま手に取って見たのも含め広く浅い教科書的な内容で、この本を読んでさっぱりわからないことがない、というのも好感が持てますが、やっぱりまあ、内容も薄く慎重ではあります、若干の知識と興味が出てきた辺りでの初中期向けかな。
中世の都市は最初期はローマ帝国の衰退とともに人口密度が低まり、そのうちにおこった各種民族の侵入に備えて一つのところに集まり、主にその脅威が去った頃の時代が扱われている、ということになるのかな、本の主役は商人や手工業者です。