「ジェヴォーダンの獣」ピエール・ペロー

ジェヴォーダンの獣”というのはこれ自体が一つの結構有名な過去の逸話で、要するに女と子どもしか狙わない、という獣が何年もの間、フランス南部のラングドック地方で何百人単位で殺し続け、フランス王宮の命令で一旦“獣”の剥製が提出されたものの。
その後も被害は出続け、ある日ふっといなくなった、というそんな顛末で。
まとめてしまったからあれですが、これは詳細な内容で読むとかなりぞっとします。


ある意味、フィクションとして「結末」を付ける前提ならば、アメリカ大陸が発見され、アフリカにもヨーロッパ人たち(フランス舞台ですが)が足を踏み入れるようになった、という時代ならでの感覚だとか、アメリカ・インディアンの登場人物(実に良かった!)を出してきた、というのは間違った方向ではないのかなぁ、という気もします。
なんていうのかな、ジェヴォーダンという片田舎といっていい土地に、フランスよりもヨーロッパよりももっと広い世界を見てる男たちが少しだけいる、という対比が案外事件そのものとは関係ないはずなんですが、なんか良かったんですよね。
そもそも、元ネタにおどろおどろしさで勝てるとも思えないしね。
ただ、フランスの絶対王政を向こうに廻した策謀(これが目的らしい、というのは話の中盤くらいから出てきます)、というのはいまいちだったなぁ。うーん、いや、彼らの仕掛けやそこから起きる反応なんてのはわかるんですけどね。
なーんか納得できないものがあったというか、要は面白くなかったな、と。
あと、若い美女と謎めいた雰囲気の売春婦と(これの正体もベタで良かったw)、生物学者と、といった感じで盛りだくさんです、しかし、語り部だったかつての少年が登場人物紹介に載ってないのがなんか解せないんですが、総じてなかなかでした。