「金曜日ラビは寝坊した」ハリイ・ケメルマン

正直聞いたことのない作品で(「九マイルは遠すぎる」は聞いたことだけ)、あまり馴染みのないユダヤ教の聖職者“ラビ”やユダヤ教のことがわかる小説、というふうに紹介されていたんですが、確かにこれを読んだだけである程度はわかるなぁ。
ラビは本来聖職者というよりも学者に近く、あまり主張する存在でもないようなのですね(というか、ラビという役職は知っていても実際のラビのこと知らんよね普通)、しかし移民先のアメリカでおずおずとユダヤ教徒としての集まりを作り始めた彼らがせっかく正式のラビを呼んできて望んだのはどうもなんというか、、威厳のある長身の、美しいバリトンの説教なんかも様になるような、って神父だろそれ(牧師さんはちょっと違う)。
だいたいそもそも、定期的に集まる習慣もないようです、10人いないと規定により会も始められないという有り様。しかしそれでも、ユダヤ教徒としての責任感に目覚めて、という方が頑張って始めた集まりなのでなんとも複雑な。


ユダヤ教というのは、ひどく内向的でよくも悪くも合理的、このラビも頭はいいがとっつきやすいタイプでもないし押し出しも弱い。ただ、きちんと付き合うととても魅力的で、なんというか深いところがあるんじゃないかなぁ。
ちょっと周囲の求めるタイプと違ったことで不信任の烙印を押されそうになってしまっていたところ、ラビの家の裏庭、彼の車の中で女性の死体が発見され、彼女は妊娠していたとのこと、そこで疑われなかったわけでもないんですがまあ聖職者の犯罪としてはちょっとね(女の子に手を出した、というくらいならともかく)。周囲の人間が順々に疑われるようになって、警察署長とも知り合いになって、ラビは状況を解きほぐし始め。
しかし、推理ってほど華々しくもないんだよな、やっぱりねw