「ヨーロッパ市民の誕生−開かれたシティズンシップへ」宮島喬

大雑把にざっくり言っちまうと「ヨーロッパは今までさんざん揉めてきた長い歴史があるから、揉め事のエキスパートだよ!」というようなことを言われたような気もしないでもないんですが、個人的にはカナダが数多いフランス系移民(かつてフランス支配地域がイギリスと交戦してイギリス支配になった、という経緯ですね)を抱え、イギリス系移民との調整に明け暮れるというのがそもそも国家体制であった故に。
逆に、それ以上の人々が流入してもその基盤があったのではないか、というのは正しいか正しくないかはともかくとして、少なくとも一理あるような気もしますね。


ヨーロッパには現在、やっとこ日本でも名前が知られて来たEU(そのくらい知っとるわ、という感覚かもしんないですけど、これの前身のECとかさらに前のEECとかせいぜい名前くらいしか知らないかと、まあ経済共同体で政治レベルじゃないんですけど)、ヨーロッパ共同体が存在しているのですが。
これが世界的にも始めての国家連合共同体の成功例(続いてASEAN)。
そもそもヨーロッパに古く、それこそローマ帝国の崩壊の頃から存在していたヨーロッパ統一構想の、一部とはいえ始めての成功例でもあり、その主な勝因はむしろ各々の大国などに含まれる「どこの国であるか、微妙である地域」や少数民族、内部にそもそも複数の民族を抱えた小国などが積極的なリーダーシップを取り。
特定の国家のイニシアティブよりももっと大きなヨーロッパ共同体に含まれることで自分たちの独自性を維持しようとしている、ということが説明されていたりします。
小さい構造の揉め事が、大きな構造体へと視点を変えると解決する、というのも、小さな揉め事の経験が別の場所でも生きるってのも、どっちもわかりやすい話ですよね。