「ヴェネツィア−水上の迷宮都市」陣内秀信

私はこの人物、著者さんを“地中海世界におけるイスラム建築”の影響を語る人、というような認識をしているのですが、その方が好きな場所に一年住んでいいよー、ということで選んだのがこのヴェネツィアの地。
わりと知られているのではないかと思うのですがいわゆる遠浅の湿地帯の中に、わずかな足場だけを足がかりにほとんどのものを人間が作り上げた生粋の水上都市。
なんでまたそんなことをしたのか、と言えばあんまり語られることもないんですが、やっぱりイタリアの地に流入し続けた侵略者とは無関係ではないのかなぁ、という気もしないでもなく、実際、他のイタリアの諸都市が興亡する中で非常に長い時間を独特の地位を保ち続け、独自の海軍力も持ち、地中海貿易の覇者であり続けたという。
(まあやんちゃなことしてた時代もあるけどね、一つの家門の独裁者が現れたことがなかった、というのは都市そのものの気質というか、そもそも生活そのものが協力不可欠で、それこそ秘密結社が大した規模持って行動するのが難しそうな都市環境そのものが関係しているような気もしないでもないですがw)


現在も交通の主流は地上ではなくて水上にあり、労しなくても世界からの観光客を迎え、けれどまあ、土地の若者は車すら存在しない街に飽いて地上の対岸に。
今はまだ中核世代がいるからいいのだろうけれども、いくら外からこの地に惹かれてやってくる人々がいるとしても、次の世代はどうなるのかなぁ、という気もしないでもなく。
けれどそもそも、この都市は名高い娼婦なども有し、他国の君主すらも骨抜きにしたことがある、というかつての歓楽都市でもあるのだよね。
水上を移動する演劇舞台とか是非見てみたいよなー、想像付かないよね。