「イタリア・ロマネスクへの旅」池田健二

同著者さんによる『フランス・ロマネスクの旅』姉妹本、というよりも、フランス版を出したのちにむしろ読者からの要望によって書かれた、という本で、ある意味正しく姉と妹の関係のようなものなのかもしれないんですが。
そのため、この本自体はこの著者さんの守備範囲ではないんだよね。
個人的にはフランス・ロマネスクとの違いを楽しむ本として読んだのだけど、まあ、イタリア・ロマネスクのほうがわかりやすく華やかで、要望が高かったこと自体もわかるような気がするかなぁと。
端的に言えばフランスの「ロマネスク」は民衆か、それに近い立場の者によって計画され、長い長い時間を掛けて建築されたのち、ほとんどのものは忘れられるようにして初期の形式を保ち(なので歴史趣味の人間としてはたまらないんですよねw)。
イタリアのロマネスク建築は建っている場所も都市の中。
時の権力者有力者によって明確なプランに沿って短期間で建築され、ただし、その後も長く現役として使われ続けたため、各時代の様式が幾重にも重なり、けれど建築様式としては非常に美しい調和を保っているという。
美術趣味や建築に興味がある人ならばこちらに惹かれて当然だなぁ、というシロモノに。


ただ正直、最初から別物というかw フランスとイタリアの風土やそもそも同じロマネスク建築であっても建てられた時期が違う、という状況は自分で読み取るしかなく。
ある意味で地域によって階層的に広がっていると感じさせられた『フランス・ロマネスクの旅』とは違う読み物になったのではないかと。実個々の都市、個々の建物の事情のほうがより強く反映されてるってまとめるとそれはそれで意味はあるかしら。