「エロティックな大英帝国−紳士アシュビーの秘密の生涯」小林章夫

大雑把にタイトルを見てもうちょっと下世話でスキャンダラスな内容を期待した人も多いのではないかと思うのですが(それこそあれですね、ちょっとお堅いイメージのある英国・ヴィクトリア朝の裏の顔というか)、イギリスの歴史本に馴染みある人なら次にまず著作者に目が行き、ああ、この人だと真面目な内容かも、と考えるんじゃないかと思うのですが。
実際あれだったんですけどね、大英帝国の裏の顔だったんですけどね
なにぶんにもとある匿名の人物の大作性秘話(? もしくは幻想のエロティカ小説)の作者が、とある有名なエロティカ書物の収集家か否か、ということを当時の英国の風習や彼個人の人生を交えて語っていく、という形式で。
まあ、この段階でなんとなくわかると思うけどお堅い内容っすね。
極めて真面目にこの本は今の人間から見ると「なーんだこの程度」と思うとか、こちらの本は男性が書いた女性の生涯だったりするんだけどなかなかエロいですよね、荒削りなんだけどね、とか、残念なことにこの本の題材である『我が生涯の秘密』は駄目なほうみたいですね、著者さんによると経験による(様々な女性との)幻想の話じゃないかなー、という推論になっていたんですが、文学的な素養がなくていまいちだそうです。
逆にまだ、生々しさがあったらそれもそれで悪くないんだけど、正直インテリ分類の人の手になるみたいで(これも謎の作者とアシュビー氏とで共通みたいだね)、いまいち経過報告っぽくて楽しくないみたいですね。


むしろどちらかというと、極めて真面目な生涯を送った商業の成功者であるアシュビー氏が如何わしい相手と結びついてまで手に入れたエロティカってのが、まあ、「この程度」だと当時の状況もわかるというか、禁止されてることって楽しいですよね、うん。