「狂女王フアナ−スペイン王家の伝説を訪ねて」西川和子

正直大変申し訳ないながら、どうしても彼女の人生において気になってしまうのは「本当に狂っていたのか」という一点で、そういう意味で言うと、まあ概ね公平であったのではないかなぁ、とは思うのですが、若干語り口調が小説チックというか、一人称を使っているので気になる人は気になるかな、とは思えないでもなく。
実際、夫のフランドル公、父のアラゴン王、息子の神聖ローマ皇帝という立場から彼女のカスティーリャ女王という身分(実際にそう振舞ったことは実はないんですが、正統の立場は誰よりも長生きした彼女が保ち続けました)を見てしまえば、「狂っていてくれたほうが都合がいい」という思惑はわからないでもないし、幽閉され続けた中でまともな生活環境すら与えられてない時期があったということは客観的に事実でしょうし。
とはいえ、彼女の母親、先代カスティーリャ女王の元であった一晩の狂乱は少なくともある程度は事実でしょうし(母親には彼女の狂気を願う理由は全くないですし)。
そして夫の元に帰った時点での夫の浮気相手の女官に対する振る舞いなんてのは、そんなにそれ以前の状況から見ても違和感はなく。
ただこれ、ヒステリー気質の女性の見せた振る舞いっちゃあその程度の話なんですよね、当時の彼女の置かれていた身分は幾つもの大国の血を引く正統の王族であり、次代の後継者と目されていて、そして周囲の人間も全てそういう意識の元に動いていたから異質な存在として浮かび上がりはするものの。


ただ、さて、その行動が理解出来ないかというと、、、別にそんなこともないよね、一途な女性だよなぁ、といったところなんじゃないかな。むしろ現代人のが近いんじゃないかな?
ただ、時代が彼女にそれを許さなかったとしたら、なんか悲しい話だよなぁ。