「怪盗ルパンの時代−ベル・エポックを謳歌した伊達男」和田英次郎

ベルエポックというのは「最良の時代」、でフランスがこう呼ばれたのはもうそろそろ第一次世界大戦だよ、という、ナポレオンが皇帝を名乗ったのち、3世皇帝が出たり戻ったり、ととにかく小競り合いが繰り返されていた時代で。
ちなみに隣国のイギリス(シャーロック・ホームズが生まれていたもので)はビクトリア女王時代で国力絶好調という、まあなんとも言えない状態だと思うんですが。
むしろこの頃を最良の時代と呼んだフランス人って面白いっていうか図太い気がするw
(でも国に国民を押さえる力があったかというと、正直なところいかにもなさそう。)


なんでルパンを題材にした本でこんなことを語っているかというと、そういう本だったからなのですが、のちにモーリス・ルブランが対決小説を一方的に書いていたイギリスで生まれたシャーロック・ホームズ作品群も実は先にアメリカで認められたあとに逆輸入されてそこから様々なブームへと分岐していったようなのですが(推理小説自体は少し前に生まれてますが、継続した作品でこれだけのレベルというのはなかったみたい)、それを受けてー、のフランスの場合は謎解き優先の冒険小説風味。
で、こちらモーリス・ルブランの小説もいささか大味なきらいがあるにはあったようですが、当時まだ到底庶民のものとは言いがたかったスポーツカーでぶっ飛ばしていた描写などの緻密さは素晴らしいらしく、経験してなければこうは書けない、という分析がされていたので、そこに着眼点を据えた作者さんごと褒め称えたいと思います。
ルパン作品のおかげで結構稼いだみたいだよ! そっかなによりだ!!
ただ正直、設定がだいぶ曖昧なのは否めないみたいなんですけども、エンターテイメントに徹していたってことなのかもしれません。ルブランいい男だよねぇ。