「電力人物誌−電力産業を育てた十三人」満田孝

技術ってなんとなく明治になってから欧米からばーっと入ってきたんだよ、という印象がありまして、実際そういう産業もあるにはあるものの、電気なんてのは日本に入ってきたのと実用に耐えるようになったというのはそんなに時代が離れてないというか「輸入だけじゃ駄目だ」というのも黎明期だったからこそじゃないかな、と多少鉄道関係の本を読んでると思わないでもないんですが(鉄道の場合はどの国の影響かってことが地味に揺らいでいたりしましたが、独自の技術者を育てるのであって独自の技術じゃなかったもんね)。
まず藤岡市助氏が電気による灯かりから始め、彼が作ったのが東京電燈かな?
地味に聞くことがあるんですが、ガス灯っていう選択肢もあったんですよね、これ。
小林十三やら根津嘉一郎なんていうと東西の私鉄でよく聞く名前なんですが彼らも呼ばれて経営に関わっている、というかどうも甲州財閥系が業界で結構大きな比重だったようで、東京電燈がまずそれだからまあ当然の話か。あと知ってるのは福澤桃助とか松永安右エ門くらいかなぁ、この人たちは実業界とか現代建築などのほうで名前を少し。


で、今までちまちま周辺事情を読んでいるとはいえ、これが1冊目になる電力業界の本としては頭の中で漠然とでも「通史」が出来たかというと結構怪しいんですが。
なにがなかったかって家庭への普及度合いの話なんですよね、創設と合併が繰り返された事情や戦時体制になって国有化されてしまう経緯や、戦後に分離民営化したなんて事情は詳しくなくても流れは掴めましたし、それこそ初期の導入や大きな電力会社の成り立ち関係くらいはわかったし、戦後に原子力にシフトする前の段階(どうも分離段階で不均衡が起こったのが直接の理由のようで;)なんかは掴めたと思うんですが。
個人的にはそこが一番興味深いので残念っちゃ残念、読みにくさはないですね。