『ビブリア古書堂の事件手帖』#8 ロバート・F・ヤング「たんぽぽ娘」

要するにこの話の肝は市場価値の高い(コバルト文庫ってことが逆に高値の理由になってるんだろうね、少女小説文庫ってそうはコレクターいなさそうだし)文庫ということと、あくまで個人的な理由で特定の本に思い入れがある、という事情が交錯してしまって事態が把握しにくくなっていたということではないかと思うんですが。

これが盗まれたのが『たんぽぽ娘』じゃなかったら、まず「なんで1冊だけ?」という女子高生の回と同じ疑問が出てきて少しはわかりやすかったと思うんだよね。

(そして本を持っていった人も、市場価値をはっきりとは知らなくてそこまでの大事になるとは思ってなかったんじゃないかな、という気もします。)

 

そもそも若い人にコバルト文庫って馴染みがあるのかという時点からどうか曖昧なんですが、昔は結構レーベルの境い目が曖昧で、今みたいに目的やターゲットでがっつりと別れてたわけではないんだよね。翻訳SFとか、少女向けであっても文学性が高い作品とかあったんだよね、今はそういう曖昧な作品ってだいたい成人向けに集約されてる気がします。

まず古書マーケットという会場があって、物理的セキュリティとしてはともかくほとんど顔見知り状態という特殊な盗難現場という設定と、「こんな状態の悪い本でも売れるんですか?」と主人公が聞いていたのが複線だったのはちょっとお見事でしたw

あとそもそも、栞子さんのお母さんと一悶着あった古書店主が聞く耳持ってくれないというのも、正直そうでもないとビブリア古書堂が関わってくることになりませんものね。

含むところのあるのが明らかな彼の自演じゃないかって疑問も、やっぱり顔見知りだから長年の付き合いとして否定されるっていう構造が面白かったです。

栞子さんの幼馴染みは主人公を認めてくれたんでしょうか、多分最後それ考えてたよねw