「私鉄業界」教育社新書 産業界シリーズ541、藤井弥太郎

そもそも鉄道というのはその巨額の建設費と、その資金の回収が非常に長期に渡って行われるという点において独特であり(そのために元国鉄であるJRや公営交通はその視点からは省かれているわけですが)、この本ではどうも副業自体、そのために行っているのではないか、という観点で語られていたように思うのですが。

うーん、初期の鉄道から読んでいると、実際にはここで語られている私鉄における副業が、2期と3期の狭間くらいに登場してきた、ということや。戦後には戦後で鉄道新線の建設資金を融資するための専門機関が出来ているいるので、それが全てだと納得するわけでもないのですが、ただ、確かに現代の私鉄ビジネスを考えるとそういう側面はあるよな、というのは事実としてありますよね。

鉄道が先か副業が先か、という順序では引っくり返っていても、その関係性が間違ってるようには思えなかったです。多分この本そのものが産業界シリーズの一貫という位置付けで、読んでいるとわかるのですがほとんど経済観点に主体になってるせいでしょうね。

具体的に言うと車両や構造物に関しての話は一切出てきませんw

営業係数の単語は使っていなかったものの、経費の話や、混雑対応に際しての複々線が費用回収が特に困難であるという話、JRが分割民営化したものの今も独特の地位にあること、私鉄におけるバス経営に関してなどに軽く触れ、その他私鉄の副業全般がメインテーマ。

 

基本的には鉄道を公共機関と捉え、採算性の良い/悪い以上に地域経済への影響なども含めて見るべきだ、とか、運賃の値上げに対して肯定的だったりと業界特有の事情にも同情的で、どちらかというと視野の広い部類の内容になっていると思います。

まあただ、不動産で鉄道を支えられるかっていうと地域限られる気はしますがw