「幻の総合商社 鈴木商店-創造的経営者の栄光と挫折」桂芳男

そもそも初代がこの鈴木商店を立ち上げ、その未亡人が凄腕の番頭に経営を任し、彼がほとんど生涯掛けて突っ走って拡大しすぎて破綻した、というだけの存在だと言ってしまえばそれだけの話なんですが、例え一瞬とはいえ「三井や三菱をも圧倒しかねない、世界的存在になった」というと、それはそれですごい話だなぁ、というのが正直なところでしょうか。

私の世代なんかだとこの鈴木商店台湾銀行の破綻、その後の影響範囲の大きさということで教科書の中ではそこそこ印象的な出来事だったりするのですが、この名前、鈴木“商店”が世界的なコングロマリット(まだそのシステムがないんですが、まあ事実上)って時点から覚えにくいよww とその頃から思っていたんですが。

そうなんですね、鈴木商店という名前に相当する規模だったんですね、もともと。

 

この本は当時民間に流布していた買占めを行う鈴木、という印象が、むしろほとんど真逆のものだったんですが(どちらかというと買占めを行っていて、鈴木のせいで儲け損ねた企業に恨まれて噂流されてるように見えなくもないのがなんとも引っ掛かる…)。

数々の企業にどんどん進出していく事業欲旺盛な大番頭・金子直吉が、結局、最終的にどうして破綻したのかといえば、銀行も持とうとしなかった、他の財閥のように事業形態を整えることもなく、後継者と見做していた人物も不運にも失うことになり、人材育成にもそれほど熱心ではなかったことが挙げられていたんですが。

やっぱり、どこまでも「そこまで大きくなるべきではなかった」という話なんだろうね。

貧しい農家出身の金子が、己の身を削ってでも市場の欠乏を見逃せず、そのために政府からも信用されて重用され、だから自分が恨まれることを考えもしてなかった、という流れはちょっと辛かったなぁ。本当に、なんだったんだろうね、この鈴木商店って、不思議だわ。