『東京人』2012年09月号「「1972年」政治の季節から荒井由美へ」

あさま山荘事件”は私は産まれる前、リアルタイムでこの事件を見ていた子ども世代くらいまでは多分知らない人はいないのではないかと思う。佐藤栄作から田中角栄へのバトンタッチ、というのはもう私が佐藤栄一がよくわからない(名前はまだ知っている)、田中角栄は多分完全に忘れ去られるのはだいぶ先になりそうな気がする、いや二世議員が有名だからではなくて、彼女が忘れられてもまだしばらく記憶に残ってる。

ただもうすでに、だいぶ当時とは印象が違うようだ、アメリカではそういえばニクソンがテレビの登場にて消えてしまって、ケネディがテレビの申し子だったと聞いたことがあるが、田中角栄もテレビの寵児だったんだろう、あるいは再評価されることもあるような気もするが(なんというか彼は中央集権の人ではなかったから、マイナスだけじゃないよな)。

政治史はそこそこ知っている私がちょっとショックだったのが沖縄生まれのアイドル歌手で、彼女は清純な印象の向こう側で釈然としない思いを抱えたまま、結婚してあっさりと芸能界を去ってしまったんだという、その全ての流れがなんだか辛いよなぁ。

この時代の歌手は、荒井由美に限らず今もまだ知っていて、日活ロマンポルノもまだ完全には忘れ去られていないような気がするのはこれは私が彼らの子ども世代だからかな。

 

あさま山荘事件は、正直なところもう意味が完全にはわからないが、リアルタイムではない人が当時を掘り起こしつつ伝えていくのだろうという気もする。日本のベトナム反戦運動の形としては、なんだろう、ずいぶん変わった形で出てきたなぁと思う、内向き過ぎて。

過去は結局、繰り返し繰り返し思い返しながらあるいは当時の人たちも知らなかった解釈を少しずつ探していくものなのかもしれない、岡田嘉子の話は少なくともそうだ、当時は皆彼女の夫の死を知らなかった、時代の流れから流れを切り取ったこの特集は面白かった。