「私鉄業界」教育社新書 産業界シリーズ335、増井健一

同じ産業界シリーズのこれよりあとの巻(別著者さんなんですが)を読んだのですが、あら、そっちのほうがむしろ歴史触れてたりするんですね。鉄道本ではあるのですが、出版社やレーベルの関係で例えば車両には全く触れてません。空港輸送に関しては京成さんのところで触れてはいるのですが(昭和57年で直接乗り入れ出来てないらしいですね)、正直、まだそれしか例がないからなんともなぁ、有料特急に関しても特になしです。
小田急なんかだと、結構ロマンスカーが稼いでるって聞くんですけどね。

 

で、もともとの閑散地への路線の敷設ならばともかく、今後の複々線や地下線や高架事業に関しては私鉄に見返りがなく、特に定期割引を受けている通勤通学時のピークのための設備投資を一体誰が負担すべきなのか、というのは結構本質的な問題なんですが。
そもそも日本以外では都市間の公共交通は採算が取れない、という認識が主流らしいんですよね、日本の場合は建設費が安い戦前までにほとんどの路線が作られていて、新しい路線には補助をする、ということで減価償却は終わっており、私鉄らはそれぞれ独占企業であるために副業を効率的に行うことが出来る、という条件があってなんとか成り立っているようですが、もちろんこれは地方の中小私鉄では難しい部分があり、上下分離方式、というのは(地代は地域が負担するよ、など、いくつかパターンあるようですが)そのために考えられたんでしょうね、この時期にはまだ単語まではないようですが。
もしくはその地に鉄道が敷かれることによる地価の向上分をその所有者の如何に関わらず私鉄に還元する、という考え方などもあったようです。副業での鉄道業の赤字の補填をあまりおおっぴらに認めてしまうと、副業が赤字になった場合に公費で補助をするのか、運賃にしわ寄せするのか、という問題も、ううん、いろいろ悩ましいんだなぁ…。