「帝都の誕生を覗く」江戸東京歴史探検5、江戸東京博物館

例えば上野の寛永寺(徳川家のゆかり)に関しては、近代以降に急激に整備されていったんだということはわかってはいるものの、浅草はかつての江戸の郊外地で江戸幕府よりもよっぽど長い歴史を持っていて、とか、銀座は3年に一度の火事のために煉瓦街にしたんだよ、だとか、そういう歴史部分を読んでいる人間ではあるものの、さて、それをどういうふうに庶民が見ていたのかな、と言われると、案外語られているところが少ないというか、日記が公開されている人などもある意味で知識人で一般人とは視点が違いそうだよなぁ、とも感じるし、そういうところを残しているのが小さな品物の数々で。
それを収蔵してるのが博物館いうことなのかなぁ、とこの本を読んでしみじみと。
ところどころに出てくるんですが、品物そのものの紹介と、あと、それが博物館に収蔵された時のお話なんてのもあるんですよね。それが少しずつ溜まって行ったからこういう本の形にしたんでしょうが、この姿勢は正直真摯だなぁ、と感じます。
多分歴史や解説という意味ではそれほどの厚みもなく、ちょうどこれ1冊で特設展示くらいの重みっていうか価値なんじゃないかな、とも思えるのですが。歴史趣味の人間だからこそ、こういうのやっぱりありがたいですね。

 

関東大震災の壊れた風景の絵葉書があるんだよね、とか、凌雲閣には本当はエレベーターが付けられるはずだったとか、それが震災後に危険だからと爆破で壊された時に、本当にショックを受けたのだという話だとか。
あの建物は、12階建てがなんでそこまで印象的なんだろうと時々不思議になるのですが、多分本当に特別なものだったと断片的に繰り返し聞いているからかもしれないなぁ。
百貨店に遊園地に、文学、しみじみと変化の時代だったんだろうなぁ。