「三菱財閥史〈大正・昭和編〉」教育社歴史新書 日本史127、三島康雄

三井財閥の本と同じく(三井には近世・明治だったけども)、明治編と大正編とで本が別けられているんですが、三井財閥がそもそもその時点で始めて「財閥」という体裁を整えたのとは違って三菱は比較的初期から財閥の形態に近く、どちらかというと明治末の頃に初代の岩崎弥太郎から弟の弥之助の時代になった時点で、海運メインから組織がかなり変化したってのが特徴的なのかな。
で、この後、久弥から小弥太へと親族の中で代替わりしているんですが、巨大コンツェルンになったのはやっぱり最後の小弥太の時代なんじゃないのかなぁ。

 

初代の弥太郎とは違ってそこまでワンマンではない、というか理想家肌な面があり、ただし時々強権的な振る舞いを覗かせる、という小弥太氏の資質は正直拡大期の財閥には打ってつけの人材だったんじゃないのかというのが正直なところですね。いちいち口出ししてると限度あるし、巨大財閥を盾にあんまり好き放題されると足元危なくなるし。
国への奉仕とか、イギリス仕込みの開明性とかわりと奇麗事に近いことも口にしてのですが、彼の立場性格と合わせて、現代に至るまで日本で一、ニを争う財閥として悪くない配分だったのではないのかなぁ、と。三井もですが、近い条件の財閥って結構数があるんですよね、その中で成長してくってのは、奇麗事だけではなくても、ある程度はあったほうがむしろストッパーになっていいのかもなぁ、と感じることの出来る歴史の流れでした。
なんか妙に抽象的な触れ方になっちゃってるんですが、事業が細分化し、それぞれがわりと独自の進展してくのでひたすらの事実の羅列になってるので、章ごとに面白い内容かはちょっと微妙なところではあります。
昭和初期に株式公開があって、戦後の解体もすんなりと事業移行したってとこかな。