「鉄道地図 残念な歴史」所澤秀樹

鉄道地図は謎だらけ (知恵の森文庫)

鉄道地図は謎だらけ (知恵の森文庫)

 

 

本のテーマとは全く違うんですが、この本は是非戦前目当てに読んで欲しいです、戦中に関しては通説通りなのでそれまでの時代の描写と比べてしまうとどうしても満足出来ませんし、戦後の国鉄解体に関してももうちょっと丁寧な本結構出てるしなぁ。
とはいえ、通説を一通り頭に入れるくらいだとどの時代も悪くないんじゃないかな。
ただ、戦前に関してはこの精度を求めようとすると論文読まないとみたいなレベルなので、このざっくりした説明は本当にありがたかったです、もっと早く読みたかった!

本そのものは明治の頃からやったらめったら計画されて、その後、人気取りの政治、軍事利用の観点、戦後のばら撒き政治に順調に支えられながら作られまくった路線と、その後の各路線の運命みたいな観点で、だいぶ皮肉な調子になっているんですが、いつまで鉄道王国のつもりだよ、という皮肉と、車社会としての成熟も実は微妙だろというところに最終的に落ち着いているので意外と緩和され、そこまで心配せずに読めるかなと思います。
需要が微妙だろうがなんだろうが鉄道が作られたらそれを生活の必要手段としてる住人は当然いて当然だし、それを政治の微妙さで全て説明しようとしたらまあ引っ掛かるよね。
ところで路線延長に拘りすぎてろくに設備転換図れなかったのが凋落の一つの理由でもあるよな! というのは始めて聞きましたが、そう、だろうなぁ。うん…。
政友会が地方重視で鉄道免許をばら撒く癖がありました、というのは私鉄にも関わってくるのでありがたく、日本鉄道関係の説明特にわかりやすかったなぁ。この方の他の明治私鉄の本とかあったら読みたいんですけど、私鉄国有化に関してまず各鉄道の大株主であった財閥、特に三菱を納得させる必要が、とかもすごく納得。設備投資等の兼ね合いで免許系の法律が迷走したのも触りながら明快でした、うん、やっぱり初期鉄道だなこの本。