「本当は恐ろしい江戸時代」八幡和郎

本当は恐ろしい江戸時代 (ソフトバンク新書)

本当は恐ろしい江戸時代 (ソフトバンク新書)

 

 

ものすごくざっくりと言えば江戸時代というのは中央集権が極まった状態で、江戸やその周辺が(上方はよく生活状態知らないんですが)そこまで悪い生活ではなかったのは事実なものの、それは度々の飢饉による餓死者の頻発や、非常に自由度の少ない各人の犠牲の上に成り立ったもので、という指摘まではまあ納得行かないでもないものの。
江戸幕府は自壊したって見方もありますが、説明としてはありだと思います、幕末の頃にその長い間の矛盾がいっせいに限界を迎えたってのは少なからず事実だろうし。)
明治維新がそこまで素晴らしかったか、と言われると、そもそもこの著者さんそういう言い方はしてないんですよね、よくよく読むと「郵便制度は本っ当に素晴らしかったのに!!」くらいしか言ってないというか、私もそこくらいしかストレートに褒めるべきじゃないって気もしますね。
あと、明治の世で旧幕府の関係の土地がそこまで冷遇されていないってのも、要するに新政府のほうにろくな人材いなかったせいでもありますしね。それを言うと全体的にわかりにくくなるから省いちゃったんでしょうが、まあ多少なりとあの時代知ってる人だとちょっと偏ってるかなぁ、と感じることはあるかなと思います。
ただまあ、そこまで含めて語ると難解な内容になってしまうというか、今現実に存在している“江戸賛美論者”のインパクトに勝てないというか、少なくとも過去の授業くらいは覚えてるよー、というレベル以下の人間にも読める簡単さで評価されてもいいかな、と。

とはいえ、語気と鼻息は荒いものの、江戸時代の批判と問題点の扱い方はそんなに不公平でもなかったかなぁ、という気もします。正妻の子でなければ馬鹿殿が頻発する、というと昨今ちょっと引っ掛かりもありますが、まあ…否定しにくいものはあるか。うん。