「陸軍中野学校-情報戦士たちの肖像」斎藤充功

陸軍中野学校 情報戦士たちの肖像 (平凡社新書)

陸軍中野学校 情報戦士たちの肖像 (平凡社新書)

 

 

確かに実在してはいるものの学校の看板すらなく、周囲の軍事施設の人間にすら「薄気味悪い」と言われていた諜報員を教育する中野学校という存在があった、という内容の本なんですが、著者さんもそう言っているのですがこれが奇妙なほど証言が少ないんだよね。
まあ確かに、金塊や阿片を使っての資源調達、暗殺などへの関与や偽札などを駆使したこともある、という断片的な情報を聞くとその部分がはっきりしないことは特には不思議じゃないとは思うものの、生存を絶対の信念として教育され、南方で実際に部隊を率い、食糧なし支援なしの状況の中でむしろ唯一の全員生還を果たしたのもこの中野学校の出身者、と言われてしまうと若干「あれ?」となるよね。
(この話はこの部隊長が部下の責任を取って処刑されてしまったのですが、その部隊の人たちが語り継いだらしいです気持ちはわかる。)
正直なところ、これだけ実地の証言が少なく、数少ない証言者も伝聞が主だったりするのでもうちょっと胡散臭い内容になってもおかしくはないんですが、あくまで判断が読み手の側に託されているという部分と、伝聞ではあるもののそれぞれの証言者の身分やどうして証言をするつもりになったかの部分から語られているために、結論までは至らないもののそういう側面の存在があったということは薄っすら伝わってくる体裁になってるんじゃないのかなぁ、しかし、ある意味でここまで謎のままのほうが不思議でもあるよね。

戦後マッカーサーの暗殺計画もあったらしいものの、あくまで日本側の抗議として位置づけられていたらしい上、どうも着任の前後で様子見ということで揉め、その後急速な統治が進んだために立ち消えたとか、うーん、なんかそんなに悪くなさそうなとこだよね…。
ある意味、だからこそずっと卒業生が沈黙を守ったってことなんでしょうか。