「政商の誕生-もうひとつの明治維新」小林正彬

この手の本を読んでいると正直自分の贔屓対象に甘く、そのライバルに対して厳しく、ということがあるんですが、最後まで読んでも特にどこ贔屓なんだかわからなかったんで別にいいんじゃないかしら。てか三菱メインなんですね、ああ、確かに三井にキツいことはあったかな、でもまあむしろ小野組の括りでちょっと気分害してるっぽかったし。
小野組はあれ、なんで潰されたかわからない上に手代の貯金まで巻き上げてたんで、いくらなんでもやり口が酷いよ本当に…、三井に厳しいってのもあくまでその時点で潰されずに済んだ三井そのものにじゃなくて政府高官との癒着部分みたいなところにですね。
しかしまあそれ自体はわりとよくあることではあるんだ、三菱の場合は「外国商船の排除」に関して政府が三菱に頼ったと説明されてて、ああ、これだとわかりやすい表現)(三菱商船のライバルである共同運輸を完全に政府掛かりって表現する本ってこれで2冊目なんだけど、もともとそういう前提だと若干わかるかも、ただ海運の独占による運送費への反発が産業界から起こってるのでそれだけで表現されるのもちょっとね、そもそも渋沢栄一が率いてる場合、政府主導とだけ表現するのも正確ではない気も。
そもそも三菱への贔屓があることがよくわからなかったというか、五代友厚贔屓で渋沢栄一はあんまり好きじゃないような気はするかな。あと、浅野総一郎を不憫がってましたw
あと松方正義かなー、確かにこの人は地位が高いわりにあんまり話を聞かない。

この本そのものはいささか研究に古い部分はあるものの、基本的に出身階級や教育、母親などに関してまで踏み込み「マージナル・マン」境界上の人物としての政商という切り口になっていたので本そのものが古びることはないような気もします。
出身階級はばらばらだけど、確かに言われてみると曖昧な地位の人多いとは思うな。