「渋沢栄一-人間の礎」童門冬二

渋沢栄一―人間の礎 (人物文庫)

渋沢栄一―人間の礎 (人物文庫)

 

 

とりあえず細かいことはさて置いて国立第一銀行の創設に関わる部分の描写が薄かったのはちょっとがっかりしましたし、まあ後半生の在野に出てからの関係はややこしすぎて意味がわかりにくそうなので構わないとして、わりと財閥と関わってたらしいのが銀行関係の記述が薄かったせいで三菱と仲悪かったというだけで(しかも理念的に違ったとかなんか曖昧、喧嘩する程度の接触あったんだと思うけど接点どこよ)、わりといろいろ目的と違って残念だったんですが。
まあ幕末からの渋沢栄一の立ち位置みたいなものはこの本の解釈が妥当なところなんじゃないですかね、どうでもいいけど、多摩の農民たちが幕末に戦い抜き、武士は逃げ去ったよね、という話のあとで「武士のほうが賢い」みたいな結論になっちゃったのは残念だよなぁ、要するにもうすでに勉強の素地があるというだけであって、農民出身が今は覚えが悪くても学校作るとか、そういう結論になって欲しかったなぁ。
(ただ渋沢さんて、わりとそういう関係のことはしてないよね、だいたい商業。)

一橋慶喜に関してがちょっと詳しく書いてあったんですが、渋沢栄一はあくまで豪農出身とは言っても農民で、それにしてはずいぶん思い切った取立てはしてくれたので、そう悪い君主でもないし、強気の策を立てもするんだけどどこかでひよる、というのは今の時点で一番納得の行く見方かなぁ、と思います。
慶喜の弟が水戸藩にいて、渋沢栄一に藩の財政建て直しを手伝って欲しい、と頼んだ時「お前が行くと揉めるからね」と止められるともっともだしきちんと考えてくれていて感動したものの、弟に直接そう言えばいいのに妙に体裁に拘る、という表現になっていたのがわかりやすくて良かったんですが、まあ明治に入るくらいまでかな、あとは別の本だな。