「円を創った男-小説・大隈重信」渡辺房男

円を創った男―小説・大隈重信 (文春文庫)

円を創った男―小説・大隈重信 (文春文庫)

 

 

ちょっと本の本筋ではないんだけれども明治6年が征韓論争で、明治14年の政変(大隈重信が主に地位を追われたちょっと筋のごちゃっとした出来事、征韓論争のほうもそれだけの問題だけでもなかったらしいけどね)が、大蔵省と民部省との争い、と認識していいんだろうか、本を読んでいる限りではそう解釈されていたようなんだけどもね。
で、この大蔵省と民部省というのもそれぞれ必ずしも藩閥で形成されていたわけでもないらしいので、結構傍目にややこしいことになってるんだろうな。
個人的にこの人の安田善次郎の本を読んでこの本に手を伸ばしたものの、三菱との関係が特に描かれてなかったのでちょっと残念。時代が違うってわけでもなくて主題と違うから省かれていたってみるのが妥当かなぁ。
ただ、時々名前だけは出てきますね、岩崎弥太郎土佐藩の幕末を財政だけで支えきった男ということで評価も高かったです。あと目立ってたのは三岡八郎と、英国公使パークス辺りかなぁ、どっちもライバルとして現れるんですが、この人物たちに対しての評価なんかはわりと妥当でよく描かれてたと思います。
が、若干他が薄いというか、人物がころころ入れ替わるし、どうもこの大隈重信という人物そのものがそうなのか敵味方がどうも一定しない。余計なことまで言う癖があるらしいことは周囲の言い分でわかるものの、正直商人めいた冷徹さのある人物にしか見えないんだよね、多分これは著者さん自体の資質じゃないのかなぁ。
安田善次郎の時にはすごく良かったんですが、大隈重信とは異質な気もします。

良かったのは円の発行に関してと、外国との付き合い方の変遷かな。やっぱりこの人の本は金融目線なんだよね、この大隈重信は経済寄りの人だったんじゃないかなぁ。