「建築探偵 東奔西走」藤森照信

建築探偵 東奔西走 (朝日文庫)

建築探偵 東奔西走 (朝日文庫)

 

 

この本の表紙になっているのは小笠原伯爵邸で、確かに小鳥をモチーフとした非常に愛らしい建物なんですが、それ以上に、明るい性格が反映されているって語りのほうが面白かったなぁ。これが市民ホールとか喫茶店ならともかく、自宅の意匠で、この小笠原伯爵ってのは行儀作法である「小笠原流」のお家の方なのだとか。
(もともと武士の出であって、京都のお公家さんに染まらないように、ということだったんだそうですが、なんか時代が変わるとだいぶ意味合い変わるなぁw)
それと対比されていた蜂須賀氏の家が、なんだろう、確かに面白いんですけどなんとなく息が詰まるような様子で、息子が家を潰したところなどが書かれていると、建物の詳細が語られるよりもちょっと鮮明にその姿を想像することにもなるような。

刑務所の話は結局子孫の方には出会えたものの(というよりもともとの知り合いだったということが判明したものの)、なんで刑務所を、なんで流麗なデザインにしたのかは親戚関係くらいでしか語られていなかったというか、資料がないんでしょうね。
そしてその理由は、なんか刑務所ばっかり作ってたって人に言いにくくて、という以上の意味があんまりないんじゃないでしょうかw
この本は建物を語るというよりは、建物周辺でうろうろしている筆者さんの活動記録が主なようなところがあるんですが、逆にどこそこでいつ頃、どのような身元の人にこのようなお話を聞きました、というのは一種の一次資料みたいなものでもあるよね。
そしてそういう書き方なのもしょうがない面があるというか、建物の記録って本当に設計者と施工主、建築会社くらいしか残ってなかったりするからなぁ。ブタビルのブタって本当になんであんな形の飾りにしたんだろう、あれ誰も記録残してないだろうなぁww