「大久保利通」維新前夜の群像5、毛利敏彦

んー、私が知りたいのは(もともと鉄道初期の事情を知りたくて明治時代を読み始めた関係で)明治政府の初期の財政事情みたいな面なんですが、どっちかというとこの本で一番わかりすかったのは薩摩藩がどうして明治維新で中心的な役割りを果たすことになっていったかの経緯のほうかもなぁ。
もともと島津斉彬という人物は名君として名高いので知っていたんですが、下級武士であった大久保利通以下の(その時点では若干頭の軽かった)若者たちを見込んで教育をしていたってところから始まったって聞いて、なんとなく納得。
「お由羅騒動」ってのも簡単な経緯と名前だけは聞いていたものの、いささか当時の感覚的には開明的すぎた斉彬に怯えて家臣が画策したことだ、というのが一番わかりやすい見解じゃないかと思います。で、そうするとその時に担ぎ出されていた島津久光と、大久保利通と同じような下級武士だった西郷隆盛が生涯そりが合わなかったってのもわからないでもない気はするなぁ。

大雑把に薩摩側のリーダーが大久保利通で、長州藩のリーダーが木戸孝允なんですが、この二人の新政府が発足して以降の付かず離れず、みたいな関係もわりとわかりやすかったかな。木戸孝允の側がいわゆる洋学派のインテリに近く、伊藤博文大隈重信などを大久保利通が重用していたってのも前から聞いてはいたんですが、どうも全体的な流れを見てると自分がまるで不得手だった財政実務を任せてたってことなのかも。
ただこの本だとどうにも幕末の全体的な政情の流れも明治のそれもわかりにくい、幕末の薩摩藩に限られていた感じ。もともと私もあんまり詳しくはないものの、どちらかというと大久保利通当人にそもそも明確な指針がなかったってことなのかなぁ。