「近代日本の鉄道構想」近代日本の社会と交通3、老川慶喜

すごく大雑把に「私有」鉄道と「国有」鉄道の問題がメインで語られていたのではないかと思うのですが、要するに結果的にこの辺が明治39年の私鉄国有化によって決着が付いたってことでまとめてあるのかなぁ、と。
まあやっぱり鉄道の父と呼ばれる井上勝氏が一番比重が多かったんですが。
あと印象的だったのが田口卯吉さん辺りでしょうか、この人は、んー、鉄道の自主経営みたいなものに拘っていて、地方の産品と結び付けて企業すべき、ということを語られていまして、この反論として周囲の発展という側面がある、という内容も。
ただこれ、本の中では特定の人によって語られてたけど、明治6年の段階から(本の内容はだいたい井上勝氏が復活した明治9年くらいからなんですが)、見てるからなぁ、特定の誰かの意見ってわけではないような気もします。
で、私鉄排斥派かそうでもないのか、ということが時々論じられている井上勝氏なんですがこの人の意見って時代時代で普通に変化してんじゃないのかしら?
なにしろこの人物はどんな地位であっても鉄道の頭みたいなものなので、その意向の在り処が気にされるのも当然なんですが、私鉄排斥じゃなくて私鉄が困ったことしがちだったって見ればまあ言ってる内容は過激でもないし、保護も普通に与えてるし。

あと、国有化することは果たして路線の延伸に有利かそうでもないか、という議論もあったんですね。今の中央線である甲武鉄道とか川越鉄道とか、京都付近の鉄道計画なんてのはあくまでも経営や実務的なところからだから全体には関係しないみたいだし。
というか「中央線」って今の八王子-東京じゃなくて八王子から横浜の方向に延伸して東海道線と接続するって計画もあったんだね、それは…結構びっくりかも。