「日本信託業発展史」麻島昭一

もともと戦前の財閥の本を読み始めて、信託銀行がキーワードになっている銀行の周辺の事情がよくわからないのでこの本を手を伸ばしたもののまず信託とはなにか、というかなり根本的なところからわからず。

「日本の信託」は英米で発展した制度とは違うものらしい、とは薄っすら聞いていたんですが、あー、ただの定期預金の好条件版になってる…。
そもそも信託銀行というものが乱立したところから、普通銀行を作るには条件が厳しいのだけれども、信託に関してはまだザル法だから、という理由だったらしく、中には事実上の人身販売を行うための隠れ蓑のような企業もあったようです、そら酷いな。
まあ、信託法が規制強化されて不動産信託が不動産業に転換してったのは特に問題ない出来事だとは思うものの、その流れの中で三井が信託銀行を財閥合同の流れで作り、そこが成功したために四大財閥が追従し、上位7位まででほとんどの信託引き受けの比率を占めており、しかしその内実はほとんど定期預金から流れたものだった、という。
信託業って要するに財産管理の依頼みたいな制度のはずなんですが、まず農地は危なっかしいからと禁止され、不動産信託が主なところは不動産業に鞍替えし、専門知識がいることはあまり勧められないという流れの中でほぼ全てが金銭信託になってしまいまして、その目的は高配当、て、思った以上に意味なかったですねこれ。
まあ、一応信託銀行そのものはそこそこ好調に回ってたみたいですが、財閥系銀行への預金集中傾向に加速が掛かってるようにしか見えないし、ううん、微妙に不毛。

三井三菱、安田住友の信託銀行は、結局三井と戦後の住友以外資料すら残っていないようなんですが、国債を避けて利回りのいい社債を主に所有していた、普通銀行のような過去の融資の焦げ付きはない、以外の意味があるんだろうかこれ。