「東京海上ロンドン支店(下」小島直記

上巻でも東京海上そのものの誕生から語られていたためにロンドン支店が出てくるまでにだいぶ時間が掛かったんですが、下巻でも早々に支店の閉鎖を決めてしまい、この本の二人の主人公のタッグによって国威のためにロンドンに支店を置きたいという本社をねじ伏せ、現地に比較的まともな条件にて代理店を引き受けさせたよ、という話もすぐに終了。
(個人的にはそこの話が聞きたいんですが、まあ保険とロンドン両方に詳しくないとちょっと手に余るって気はします実際。)
「冷酷な」独裁者である各務氏と、「ラッパ」と関西実業界で呼ばれるに至った平生さんの対比ってのがこの本そのもののテーマなのかなぁ、と思うんですが。
正直どっちかというと資料が手に入れられたラッパ=平生氏に関してだけを読んでいた時はそこまで感じなかったんですが、冷酷でしまり屋に見えた各務氏も実は多額の寄付をしていたんだよ!! で話が締められるとそれはそれでちょっと苦笑w
それもそれで結構なステレオタイプの展開って気も。
あとから考えてみれば、平生、各務の立場はともかく能力はほぼ同等、なのに各務が完全に上位へと君臨し、という環境を考えるともともと強権だった各務氏がだんだんと控えめに、もともと苦労人だった平生氏が少しずつラッパになっていったという変化もそこまで理解出来ないものでもないしなぁ。

あと、平生氏が人の道を踏み外したってんならともかく、まあせいぜい、坊さんを説教してたり政治に入れ込んだりってレベルだしな、親馬鹿もよほどかと思ったら、うん、別にいいんじゃないこの息子? みたいなところに落着してちょっと拍子抜けしたかも。
あくまで一財界の人生とそれを取り巻く世界の本として読めばいいのかな。