「物語 財閥の歴史」中野明

物語 財閥の歴史(祥伝社新書)

物語 財閥の歴史(祥伝社新書)

 

 

 もともとわりと資料がすっきりしている住友はともかく、三井や三菱にもちょっとずつ曖昧な時期があるように思うんですが(最近やってる人材の横のつながりって意味ではちょっと物足りなかったけど、触れてるだけでも悪くはないですね)、若干ずつとはいえその辺の研究も進んでいるのかなぁ、古い本より新しい本のほうが進歩してるよな。
三井はあれ、為替方という政府の公金取り扱いの役に付いていた時期が、結構ややこしいんですが倒産しそうになってからどうやって切り抜けたまでがきちんとつながっていたんじゃないのかな。清との緊張によって政府に資金が足りなくなって公金返還指示が出て、それから英国オリエンタル銀行に借款、その後の返済に関してはまた公金の取り扱い指定を戻して貰って切り抜けたよー、うん、これでだいたいつながる。
個人的にはこれ以前の為替会社という明治2年の事態や、第一銀行を小野組と三井組とで経営してたら小野組が潰れて放り出されたとか、そこも触れてあれば良かったんですが、まあ、だいたい上の流れに乗せられるかなぁ。
金融機関に関しての本じゃなくて財閥の本だしね、資金の流れさえあればいいか。

住友は払下げの鉱山が始まり、三菱の場合は海運の保護と政府の制約とをバーターで受け、その後、独占企業になりすぎたために政府が三菱の商船会社のライバルとなる共同運輸を立ち上げるのに手を貸した、というのが一貫して述べられていたのが珍しい。
わりとこれ、どっちかのみに限られてるからな、きちんとつながるよねぇ、これで。
二流財閥と総合財閥の違いや、戦争における膨張、恐慌によっての趨勢など、詳しいってほどでもないんですが手持ちの資料が概ね含まれてる感じで個人的には良かったです、が、情報量多すぎてひょっとして敷居高いんだろうかこの本…、ちょっと心配かも。