「古代の鉄と神々」真弓常忠

私は確かかつて銅鐸は楽器だと習っていた世代なんですが(多分、でも友人とか妹はもう違うんだよね)、これはどうも初期は打ち鳴らしていた形跡があること、単に遺棄されていたものと思われていたのが楽器としての形状とは逆の形、頭を下に埋められていた形跡があったことなどから祭事の道具ではないか、と言われているところまでは知っていたんですが、結構古い段階で「原始的な鉄であるスズの祈願ではないか」って説を打ち立ててる人がいたんだね、というのがこの本。
ん、うーん、大雑把に青銅が鉄と比べた時に実用性に乏しく、実用性に乏しい親類で実用性の高いスズを呼ぼうとした、というのは話としては面白いんですが、なんだろ、銅剣と一緒に同じ形で、規則性を持って埋められていたというその後の発掘状況と結び付くかっていうと、今の時点では捕捉にはなっていないような気もするんですけどね。
ただ、鉄の武器使っていただろう時代(日本には青銅器時代がないらしいです)に青銅の剣をわざわざ青銅の祭事の道具と一緒に埋めていた、という部分に、金属的な意味で特別な意味合いがあるってところまでは確かにありそうな話だよなぁ。

日本神話における鉄との関係があるのではないか、という指摘に関しても一旦保留、鉄というものの重要性を考えると主要な神や武威を誇る神、蛇や土に関係する、金属を擁する神にその辺のエピソードが付随してるってのは面白いんじゃないかと思います。
要するに、神話を鉄や金属の性質によって読み取る試みだよね、これで確定とは思わないものの、鉄に関わることが神秘的に思われてても違和感はない、というか当たり前だよね。
植物が鉄の塊を作る「スズ」や野だたらによる褐色鉄、たたら炉による精度の高い和鋼(玉鋼)など、もうちょっと本腰入れて研究されてもいいんじゃないかしら。